補助金や融資の資料でよく見かける「スマート農業技術活用促進法の認定を受けると優遇」という言葉。この認定は、法人や大きな経営体だけのものではなく、個人の農家も申請できます。ただし、機械を買うだけでは認定されず、規模や目標の条件もあります。農林水産省の資料をもとに、仕組みと申請の流れを整理します。
認定とは:機械と「新しい作り方」をセットにした計画

みのり:スマート農機を買えば、認定されるんですか?
ゲンさん:それだけじゃだめなんだ。機械の力を生かす新しい作り方とセットにするんだよ[2]

ゲンさん:たとえば、ドローンで種をまくのに合わせて、田植えから直播に切り替えるとかね[3]
みのり:機械と作り方を一緒に変えるんですね
みのり(新規就農1年目)ゲンさん(地元の先輩農家)
スマート農業技術活用促進法(正式名称は「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律」)は、令和6年10月1日に施行されました。農業者が作る「生産方式革新実施計画」と、メーカーなどが作る「開発供給実施計画」の2種類の計画を国が認定し、融資や税制などで後押しする仕組みです。この記事では、農業者向けの生産方式革新実施計画を取り上げます。[1]
認定のポイントは、スマート農業技術を使うことと、その効果を十分に引き出すための「新たな生産の方式」を、セットで取り入れることです。資料では、農業用ドローンと直播栽培への転換、ロボットトラクタとターン農道の整備、収穫ロボットとハウス床面のコンクリート化、栽培管理システムとデータの共有・分析といった組み合わせが例に挙がっています。[3]
逆に、スマート農業技術を使う面積を広げるだけでは認定されず、新たな生産の方式の取り組みも広げる必要があるとされています。[2]
個人や小規模の農家でも受けられる?


みのり(新規就農1年目)ゲンさん(地元の先輩農家)
農林水産省のQ&Aでは、農業者が単独で計画を作ることは「可能です」と答えています。個人の農業者のほか、農地所有適格法人や集落営農組織なども対象で、複数の農業者による共同申請や、団体での申請もできます。[2][3]
一律の面積要件はありません。ただし、取り組む品目について、申請者の作付面積のおおむね過半で取り組むか、その品目をつくる認定農業者の全国平均の作付面積の5倍以上で取り組む必要があります(水稲なら全国平均5ha×5=25ha以上が例として示されています)。小さな経営でも、品目のおおむね過半で取り組めば、この条件は満たせます。[2][3]
国は、個人で申請する場合は費用対効果に気をつけるよう求めています。効果が見込みにくいときは、サービス事業者のスマート農機のレンタルや農作業の委託、複数の農業者での共同利用を検討するよう案内しています。機械を自分で持たず、ドローン散布の作業委託などのサービスを利用する形でも対象になります。[3]
認定を受けた計画は233件です(令和8年10月8日時点)。認定状況の一覧には、個人名で認定を受けた農家も多く載っています。[4]
- 山口県下関市・水稲:農業用ドローン + 直播栽培体系の導入
- 徳島県徳島市・ブロッコリーなど野菜6品目:トラクターに付ける直進アシスト装置 + 機械が旋回するための枕地の確保
- 愛媛県宇和島市・柑橘類:農業用ドローン + ドローン作業に適した樹形への剪定
- 長野県飯山市・水稲:ドローンセンシング + 他の生産者とのデータ共有・分析によるほ場ごとの適期追肥・防除[5][6][7][8]
編集部より:上の例はいずれも個人の農業者による認定です。新規就農者が申請できるかどうかは、今回確認した国の資料には書かれていませんでした。これから就農する方は、申請先の地方農政局等に相談してください。
立てる目標と計画の期間

ゲンさん:計画では、労働生産性を5%以上上げる目標を立てる。期間は原則5年以内だ[3]
みのり:目標に届かなかったら、取り消し…?

ゲンさん:すぐに取り消されるわけじゃない。毎年の報告で、届かなかった理由を説明するんだ[2]
みのり:毎年きちんと振り返るんですね
みのり(新規就農1年目)ゲンさん(地元の先輩農家)
計画では、計画全体で農業の労働生産性を5%以上向上させる目標を立てます。労働生産性は「付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)÷労働時間または取組人数」で計算します。あわせて、取り組む前と比べて所得が維持され、かつプラスであることも求められます。[3]
計画の期間は原則5年以内で、果樹の植栽など育てるのに時間がかかる場合は10年以内まで設定できます。[3]
期間中に目標を達成できなかったことを理由に、ただちに認定が取り消されるわけではありません。ただし、原因を分析して実施状況報告に書く必要があります。実施状況報告は、計画期間中の毎年度、5月31日までに提出します。[2]
認定を受けるメリット


ゲンさん:ただし税の特例には別の条件がある。機械は7年以内に販売されたものに限られるよ[10]
みのり:細かい条件は、必ず確かめないと
みのり(新規就農1年目)ゲンさん(地元の先輩農家)
- 融資:日本政策金融公庫の「スマート農業技術活用促進資金」を使えます。融資限度額は負担額の80%以内、期間は25年以内(うち据置期間5年以内)です。
- 税制:スマート農業技術を組み込んだ機械装置は32%、建物や構築物は16%の特別償却ができます(令和9年3月31日まで)。
- 補助事業:スマート技術体系への転換を支援する事業(スマ転事業)では、認定を受けた人は個人単独で都道府県に直接申請でき、面積要件がなく、採択の審査で7ポイントが加算されます。個人経営でも農業機械の購入費の1/2の支援を受けられます。
- 航空法の特例:ドローンで農薬散布などの特定飛行を行う場合、航空法の許可・承認の手続きがワンストップになります。
- 農地法の特例:収穫ロボットのためにハウスの床面をコンクリートで覆う場合などの、農地法の届出がワンストップになります。[9][10][11][12]
ただし、税の特例は認定とは別の条件があります。対象の機械装置は7年以内に販売されたものに限られ、労働生産性を5年間で5%以上向上させる目標は、個人または法人単独で満たす必要があります。[10][12]
国は令和9年度予算の概算要求で、認定を受けた農業者などを予算面で優遇して集中的に支援する「スマート農業技術活用促進集中支援プログラム」に、796億3,700万円(前年度185億500万円)を要求しています。[14]
概算要求は、各省が財務省に求める金額です。年末の政府予算案や国会の審議で、金額や中身が変わることがあります。
申請の流れと相談先


ゲンさん:取り組みを始める前に、認定を受けておく必要がある。順番に気をつけよう[2]
みのり:まずは相談の電話からですね!
みのり(新規就農1年目)ゲンさん(地元の先輩農家)
- 事前相談:所在地を管轄する地方農政局等(北海道は北海道農政事務所、沖縄は沖縄総合事務局)に相談します。
- 申請:認定申請書と計画書などを提出します。受付は通年です。
- 審査:審査には1か月程度かかります。
- 認定・公表:認定されると通知があり、計画の概要が公表されます。
- 実施:計画に沿って取り組み、毎年度、実施状況を報告します。[2][3][13]
計画に書く取り組みは、始める前に認定を受ける必要があります。日本政策金融公庫の融資を使いたい場合は、計画の事前相談と同じタイミングで、最寄りの公庫の窓口にも相談するよう案内されています。[2]
申請書の様式や計画の作り方の手引き、窓口の電話番号・メールアドレスは、農林水産省の申請・認定のページで確認できます。[13]
出典
- [1] 農林水産省「スマート農業技術活用促進法について」
- [2] 農林水産省「スマート農業技術活用促進法 Q&A(令和8年5月版)」
- [3] 農林水産省「生産方式革新実施計画の認定制度について(詳細版チラシ、令和8年5月版)」
- [4] 農林水産省(2026年10月8日)「生産方式革新実施計画の認定状況について」
- [5] 農林水産省(2025年3月21日)「生産方式革新実施計画の概要(山口県下関市・水稲)」
- [6] 農林水産省(2025年6月26日)「生産方式革新実施計画の概要(徳島県徳島市・野菜)」
- [7] 農林水産省(2025年10月30日)「生産方式革新実施計画の概要(愛媛県宇和島市・柑橘類)」
- [8] 農林水産省(2026年7月23日)「生産方式革新実施計画の概要(長野県飯山市・水稲)」
- [9] 日本政策金融公庫「スマート農業技術活用促進資金」
- [10] 農林水産省「スマート農業技術活用投資促進税制」
- [11] 農林水産省「スマ転事業(地域型)計画認定者向けチラシ」
- [12] 農林水産省「生産方式革新実施計画の認定を受けるメリット」
- [13] 農林水産省「生産方式革新実施計画の申請・認定に関する情報」
- [14] 農林水産省「令和9年度予算概算要求:スマート農業技術活用促進集中支援プログラム」
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