スマート農業比較ナビ
作物別スタートガイド

ハウス栽培(施設園芸)を未経験から始める

トマト・いちご・きゅうりなどをハウスの中で育てます。温度や湿度などの環境を管理する作業が中心で、データを見ながら育てる農業と相性のよい分野です。
トマトが実るビニールハウスの中で、スマホのグラフを見る新人と換気窓を指さす先輩

国の実証で減った作業時間(施設園芸の平均)

43%減

スマート農業の技術を入れた作業ごとの、労働時間の削減率の平均です。

出典:農林水産技術会議事務局「労働力不足の解消に向けたスマート農業実証の結果について」

主な作業

ハウス栽培で使えるスマート農業の道具

道具ごとの向き不向きです。規模や地域によって変わるので、目安として見てください。

自動操舵システム

対象外

ハウス内の作業はトラクターの自動操舵の対象になりにくいです。

農業ドローン

対象外

ハウス内の防除はドローン散布の対象になりにくいです。

ハウスの環境制御も比べられます温度・湿度・CO2などをスマホで見守り、窓や暖房を自動で動かす機器の比較はこちら →

ハウス栽培の公的な事例

国の実証などの資料から。費用が増えた点や条件も、資料に書かれたとおりに載せています。

施設園芸雇用者

施設きゅうり:養液栽培とデータ活用で単収増

きゅうり単作52.5a(うち養液土耕40.5a・養液栽培12a)、家族3名+常時雇用14名(平成30年(慣行)→令和2年(実証))

養液栽培を新たに入れ、温度・湿度や作物の生育データを見ながら細かく環境を調整した結果、単収と利益が増えました。一方で、作業時間はむしろ増えており、「楽になる」より「たくさん穫って稼ぐ」方向の事例です。得られたデータは新規就農者を含む産地の生産者と共有されています。

導入した技術:人工培地の養液栽培、ハウス内の温湿度データと植物の生育データにもとづく環境制御、労務管理システム

単収(農場全体)
31.7トン → 36.2トン(10a当たり)
利益(10a当たり)
-243千円 → 432千円(約67万円増)
労働時間(10a当たり)
3,309時間 → 3,854時間
機械・施設費(10a当たり)
906千円 → 1,151千円

注意:利益の増加には市況変動の好影響もあったと出典に記載。10a当たりの労働時間・労働費(単価1,500円/時間で計算)は増えている。労務管理システムによる人員配置改善は「今後見込まれる」段階。

出典:農研機構 スマート農業実証プロジェクト 施設園芸の分析結果「実証事例(施設きゅうり 環境・生育データを活用した高度な栽培管理)」

施設園芸雇用者

施設なす:JA部会でデータとコツを共有

ナス単作127a、家族4名+常時雇用9名(JA部会員)(平成30年(慣行)→令和2年(実証))

単収の多い農家の栽培記録をもとに水やり・肥料の管理指針をつくり、チャットツールで部会員に共有しました。各自が管理を見直した結果、部会員の平均販売収入が7%増えています。出典は、ソフトウェア中心の技術は農業者が簡単に取り組めるとしています。

導入した技術:生産情報管理システム、営農管理システム、農業用チャットツール、出荷予測ソフト、AI搭載の自動給水・施肥システム

部会員の平均販売収入
7%増
単収(10a当たり)
18.4トン → 21.4トン
利益(10a当たり)
-72千円 → 658千円(約73万円増)
労働時間(10a当たり)
1,514時間 → 1,438時間

注意:単収増大に加えて市況変動の好影響もあったと出典に記載。その他費用の増加は老朽化したハウス天井資材の張替え(+973千円/10a)による。

出典:農研機構 スマート農業実証プロジェクト 施設園芸の分析結果「実証事例(施設なす JA部会員間での優良経営体のデータの共有と活用)」

施設園芸茨城県常陸大宮市中山間

中山間の直売いちご:低コスト環境制御と需要予測

直売型イチゴ経営(中小規模パイプハウス、実証面積10a)(令和2〜3年度作)

中山間地の小さなパイプハウスで、必要な部分だけを自動化する安価な環境制御と自動かん水を使い、収量を3割以上増やしました。さらに道の駅などの売れ行きを予測して高く売れる販路へ回し、単価も上がっています。ただし機器の設定は難しく、最初は専門家の支援が必要とされています。

導入した技術:低コストな環境制御(自動換気・CO2施用・クラウン冷却)、AI養液土耕による自動かん水、画像による生育の自動測定、直売所・道の駅の集客・需要予測、アシストスーツ

可販果収量(10a当たり)
4.2t(慣行区・H30年度作)→ 5.7t(R2年度作)
販売単価
22%向上(R2年度作、H30年度作対比)
アシストスーツによる作業時間
年間5.14%減(10a当たり129時間短縮)
収益性(所得)
慣行区比278%(R2年度作)、255%(R3年度作)

注意:環境制御機器は設定に一定のハードルがあり、導入初期にメーカーや指導機関のサポートが必要。自動かん水は土質に応じた目標土壌水分の微調整が必要で、初年度は稼働状況に注意。アシストスーツは調整が不十分だと効果が不安定で、背面ベルトが直射日光で高温になる。収穫の時短効果は1人当たり収穫量が多い2月以降に限られた。

出典:農研機構 スマート農業実証プロジェクト 成果集【施2C01】直売イチゴ経営におけるスマートフードチェーン構築によるデータ駆動型高収益経営体系の実証

施設園芸熊本県阿蘇市

阿蘇のいちご:増収したが所得増は2%程度

JA阿蘇いちご部会委託部(実証面積37.3a)、共同選果施設を含む(令和元〜2年度)

CO2を株の近くに効率よく施すことで増収と灯油の節約を実現しました。ただし品種「恋みのり」の経営比較では販売額はわずかに減り、農業所得の増加は2.1%にとどまっています。選果ロボットは操作できる人材の確保が課題とされました。

導入した技術:株元へのCO2局所施用、ハウス内環境・排液のモニタリング、画像による生育・収量予測、スマホでの情報の見える化、選別・パック詰めロボット

局所CO2施用による増収
16%(恋みのり、5月末まで)
CO2施用の灯油使用量
30%以上削減(3月末まで)
収益性(恋みのり、対照区比)
販売額1.0%減、経営費0.8%・労働費0.3%減、農業所得2.1%増
収量予測精度
10日前予測で平均75%(目標80%)

注意:選別・パック詰めロボットは産業用ロボットアームを使うため、操作教育を受けた人以外は操作しない前提で、使いこなす人材の確保が課題とされた。安価に導入できる装置の開発や、安価な通信ネットワークの構築も課題に挙げられている。局所CO2施用システムは自家施工で40万円程度。

出典:農研機構 スマート農業実証プロジェクト 成果集【施H06】促成イチゴ栽培における圃場内環境および作物生育情報を活用した局所適時環境調節技術による省エネ多収安定生産と自動選別・パック詰めロボットを活用した調製作業の省力化による次世代型経営体系の構築

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道具の費用の試算例

例として3ha・年2回の防除で試算しています。製品は価格がいちばん安いものを機械的に選び、補助金は使わない場合です。トラクター本体・資材・燃料などは含みません。

組み合わせ1年目に払う額年あたりの費用
記録から始めるアプリで記録0円0円

年あたりの費用は、機械を法定耐用年数(農業用設備7年)でならした額です。計算の前提と出典は費用シミュレーターに載せています。

面積や製品を変えて試算する

始め方と、使える支援

技術や作業の時期は、地域や品種によって大きく変わります。まずはお近くの就農相談窓口で、その地域でハウス栽培を始める方法を聞いてみてください。

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